蛇口の付け根から水がジワジワ出てくる

塵も積もれば山となるとは、小さなことでも積み重ねれば大きくなるのだから、小事を大切にしなくてはならないよ、ということわざである。今更説明するまでもないかもしれないけれど、私は腕を組みながら、台所の水道を眺めつつ、この言葉を反芻している。数日前から、蛇口の付け根から水がジワジワ出てくるのだ。水を流しているときはもちろん、水を止めてもジワジワ出てくる。それほど大した量ではないにせよ、このまま放っておけばきっと水の量は増えてくるだろうなーという予想はできる。

さっさと業者に頼んで修理をすればいいだけのことだ。だけど、今月は子どもの誕生日やら病院やらでいつもの月より出費が多いし、それに今度バーゲンセールでずっと欲しかった新しいカバンを買おうと思っていたところである。これ以上の出費はできれば避けたい。次のお給料日まで、見なかったことにしようか。うん、そうだ、そうしよう。

気持ちを切り替えて振り帰ると、うちの長男がすぐそこに立っていたので、私は志村けんばりのリアクションで驚いた。長男は私を咎めるような目で見ながら、ジワジワ漏れる水を指さして言った。「水道、直さないの?」「え?水道?何のこと?」すっとぼけようとしたけれど、長男にはすべてお見通しである。「地球上の水で飲める水は、0.01%以下なんだってよ」とどこで仕入れたのか水の紋所…いやトリビアを振りかざしてきた。思わず口笛を吹いて昭和みたいなとぼけ方をしようかと思ったけれど、きっと長男には通用しないだろう。「修理屋さん…呼ぶよ」…私は観念した。

確かに我が家の家計の問題だけじゃなく、飲み水は地球にとって貴重だもんね…。水を大切にする姿を見せるのも、親の務めよね…。羽をつけて飛んで行った新しいバッグの穴をふさぐかのように、私は自分に言い聞かせたのだった。

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